一日二食

オーケストラホルンというコンビでフリー芸人をやっています。その日起きたことやふと思ったこと、ライブの告知を主に書いていきます。

ファッキンドライバー

ネタ合わせとライブ終わりにいつものように電車に乗ってウトウトしていると、ふと気が付いたら一駅寝過ごしていた。普段そこまで電車で深く眠ったりしないので、寝過ごすなんてことは数年ぶり。しょうがないから一駅折り返すかと思ったら、上り列車はすでに終電が過ぎていた。

これは一駅歩くしかないなと覚悟を決めた。だが僕の住んでいる地域は埼玉の片田舎で、一駅の間が異常に長い。東京メトロなんかは10分も歩けば隣の駅に着くから一駅乗り過ごしても特に問題はないけど、埼玉の片田舎の駅間は7キロくらいある。電車でも10分近くかかる区間を歩かなければならない。最寄駅で目が覚めて目の前でドアが閉まった時は最悪で、10分間自分の不甲斐なさに絶望しながら街灯もないクソみたいな田んぼ道を見せられる羽目になるのだ。

大学一年生の冬に一度終電で乗り過ごしたことがあり、お金もなかったので7キロの夜道を足元をスマホの懐中電灯で照らしながらGoogleマップを頼りに帰ろうとした。だが途中でスマホの充電が切れてしまい、田んぼのど真ん中で遭難をする羽目になった。圧倒的な自然の前に人は無力なんだなと絶望してなんとなく空を見上げると、帰り道にいつも見えるオリオン座を見つけ、それを頼りに歩いたら無事帰ることができたのだった。まさか21世紀に星に感謝することになるとは。

とりあえず、今回も何とかして家に帰らなきゃいけない。

田舎過ぎて漫画喫茶なんて最先端の設備はない。おそらく住民たちは漫画喫茶の存在も知らない。もしかしたら漫画も喫茶も知らないかもしれない。親に迎えに来てもらおうと家族ラインで連絡をしたが、どうやら二人とも酒を飲んでしまったらしく、迎えに行くのは法的に無理。一人暮らししている姉からは自業自得だと個別で返信が来た。女を殴りたいと思ったのは久しぶりだ。

こうなってくるといよいよ歩いて帰るしかない。タクシーなんてもってのほかだ。片道7キロの道のりを深夜割増のタクシーに一人で乗るなんて馬鹿げている。何のためにマネーフォワードをやっているんだ。この前携帯料金を1000円下げることに成功して一喜一憂していたのに30秒寝過ごしただけでその何倍もの金が吹き飛ぶなんて絶対に許されない。

まあ今回は幸いスマホの充電もモバイルバッテリーもあるので、何とか帰れるかなと思いながら駅の外に出ると、雨が土砂降りだった。うわ、だっる~と思いながら折りたたみ傘を取り出そうとしたら傘を忘れてきていた。終わった。僕が何をしたっていうんだ。年金しっかり払っているのにこの仕打ちはあんまりだろ。 

雨土砂降りの中、傘もない。でもタクシーは絶対に乗りたくない。

どうする。周りを見渡してもコンビニはない。おそらくこの地域にコンビニという概念はない。つまり傘も買えない。どうする。友達に来てもらうか。いやでももう皆就職して明日も仕事だろうし申し訳なさすぎる。でもタクシーは絶対に乗りたくない。

そう思っていると目の前に一台のタクシーが通りすぎようとしていた。無意識に手を挙げていた。

してやられたよ。おそらくこのタクシーは僕みたいな終電で寝過ごしたカモを狙って駅に張っていたんだろう。計画通り過ぎて笑いをこらえるのに必死になりながら運転してるに違いない。

このクソみたいな出費を少しでも納得するために、これも人生経験の一つだ、この体験からネタが作れたらタクシー代なんて安いものだと思いこみ、少しでも何か起きろと願っていたがまじで何も起きねえ。漫才師がタクシーの漫才をする時にタクシーで行先伝えるのが難しいと言うけど全く難しくない。住所をカーナビに伝えるだけ。難しいわけないだろこんなもんが。あの入りでコントインしてる漫才師は全員タクシー童貞だ。 

よくタクシー運転手は滑らない話のひとつやふたつ持っているものという謎のハードルがあるが、あれも嘘だ。そもそも運転に集中してくれと思うし、目の前で料金メーターがすさまじい勢いで上がり続けているのに人の話聞けるわけないだろ。

 

結局何もトラブルは起こらず家につき、15分で3000円という風俗クラスの料金を運転手の爺さんに支払った。これはしょうがない出費なのだ。雨の中濡れて帰って風邪ひかないで済んだと思えは3000円なんて安いものだ。そんなことよりも明日は早くから用事が入っているから、それに向けてコンディションを整えるべきだと思いすぐベッドに入った。

で、今日朝起きたらドタキャンの連絡が入っていた。

僕が何をしたというんだ。日本氏ね。